働く君に伝えたい「お金」の教養・出口治明

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評価★★★★☆(4.0・また読みたい)

20代に向けた、お金の指南本。これまでのお金の常識を見直しつつ、お金についての考え方だけではなく、生きる上でのリテラシーを教えてくれる本。

 

この本の趣旨は、お金とどう付き合ってくれればいいかを伝える点にあります。しかし、私は、この本の真の価値は、「情報化社会において、間違った情報に踊らされない方法」を教えてくれる点にあると考えています。

 

この本は、私たちが他人に騙されないためにすべきことは、以下の2点だとしています。

 

①政府やきちんとした民間の調査機関が集計・分析したデータ(数字・ファクト)を探す

②そのデータをもとにして、偏見を持たずにロジック(論理)を組み立てる

(p.26)

 

本や雑誌を読んでいると、間違っていたり、不正確だったりする事例から論理を展開しているものが、実に多いです。たとえば、まことしやかに言われるものに、近年は犯罪が増えただとか、若者による犯罪が多いとかいう話があります。実は、高度経済成長期から犯罪の数はぐんと減っているし、犯罪を行うのは高齢者のほうが割合が高いです。「それって本当? ソースはどこ?」と自分から確かめに行かないと、誰かの作った虚像に踊らされる羽目になると痛感する日々です。

 

メディアリテラシーについては、不安をあおるビジネスに対するリテラシーのくだりも有用です。

 

「そもそも、なぜメディアは不安ばかり煽るのか?」を考えてみましょう。

答えは簡単。不安を煽るほうが商売がしやすくて、「儲かる人」がいるから。それだけのことです。(p.23)

メディアの情報に接するときには、「これで儲かるのは誰だろう?」と考えるクセをつけましょう。(p.25)

 

これは特に食と健康の分野で顕著かと思います。特定の栄養素や食品が体に悪いといい、一方でアサイ―やら納豆やら鯖缶やらの健康効果を喧伝し、スーパーから関連食品が姿を消す。ブルーベリーもアボカドもアサイ―も、なにがしかの栄養素が豊富だと言われて売り出されていますが、あれは売り上げを稼ぐために体にいいイメージを作っているのでしょうね。

 

以下、参考になった点を箇条書きにします。

・財産三分法

財布・投資・預金 

楽しく使う

財産三分法内のバランスを取りながら、優先順位を考える

自分が何を楽しいと思い何を大切にし、どんな人間になりたいか(p.88)

を考えるべき

 

・自分への投資が重要。特に人と本と旅は重要である。同じ経験なら若いうちにしろ

・比較検討のうえで安いものを選ぶのはケチではない

 ・貯蓄はまず手取り一年分を目安に。老後も働き続ければいい(老後の健康状態に不安は残りますが)

・20代に進めるのは就業不能保険

・投資対象の分散、成長の期待できるものに投資、10年スパンでリターンを得るつもりで

投資信託 よくわからないものには投資をしない

・国内株式 海外債券

・NISA

 

それにしても、この本で、大手銀行の資産の2割が国債に充てられているというくだりがありますが、みずほ総合研究所http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/gl160212.pdf#search='%E3%81%BF%E3%81%9A%E3%81%BB%E9%8A%80%E8%A1%8C+%E5%9B%BD%E5%82%B5%E4%BF%9D%E6%9C%89')のレポートを見ると、

2015年3月の時点で、メガバンク3社の国債の保有額が中核的自己資本に占める割合は29.1 25.0 16.8

総資産に占める割合は11 12 8

となっています。意図的かうっかりかはわかりませんが、資産と中核的自己資本を取り違えていますね。メディアリテラシーを教えるなら詰めをしっかりしてほしかったです。